メイプルシロップとは
- 主に北米産のカエデ (シュガーメイプル = Acer saccharum) の樹液から作られる天然由来の甘味料。樹液に糖が含まれ、この樹液を収穫し、濃縮・加熱して作られる。約40分の1まで煮詰めてつくる。
- カナダの名産品。カナダが世界生産量の8割を占める。アメリカのインディアンによって太古から作られており、近代では日本でも生産されている。
- サトウカエデの原生林の分布は、世界でもごく一部の地域に限られる。世界最大のメープルシロップの生産地は、カナダの東部、ケベック州。
- 樹液を採取できるのは1年の中でも初春(2月末~3月上旬)に限られている。
- 樹液は無色透明だが、煮つめることによって琥珀色になる。 メープルシロップ独特の香りと味は、樹液が本来もっているもので、煮つめられることによりさらに際立つ。
- 一般的に、パンケーキやワッフルなどの朝食にかけたり、料理やデザートに甘みを加えるために使われる。
- 他のメイプルの種類も存在するが、シュガーメイプルが最も多くの糖分を含んでいるため、最も一般的かつ広く利用されている。
- メープルシロップは日本のカエデ類からも製造できるが、日本のカエデから取れる樹液は、シュガーメイプルに比べて糖分の含有量が約半分で、コスパが悪い。
- 2010年代後半~2020年において、日本で恒常的にメープルシロップを製造・販売しているのは、埼玉県秩父市および山形県金山町、2016年に参入した占冠村木質バイオマス生産組合(北海道)である。
- アメリカのケンタッキー州では胡桃の木から採取したウォールナット・シロップ (Walnut Syrup) という変わり種もある。また、シベリアやアラスカでは樺の木 (Birch tree) から採取したシロップがある。いずれもメープルシロップには及ばないが、貴重な糖分を得る手段となっている。
- カナダの一部の州では、樹木から採取した樹液に紅葉したカエデを漬け込むことで、一般的なシロップよりも派手な色彩のクリムゾンメープルシロップ(crimson maple Syrup)を作る風習が受け継がれている。
製法
- 樹液の収穫 : 春季に樹液が採取される。これは凍結と解凍のサイクルにより糖分を樹液に引き出す自然のプロセスに基づいている。
- 樹液の濃縮:収穫された樹液は濃縮され、水分を蒸発させて糖分を高める。通常、これは専用の加熱装置で行われる。
- ろ過と精製:不純物を取り除くために樹液がろ過される。この工程により、シロップの透明度と品質が向上する。
- 加熱:最終的なシロップは再び加熱され、望みの濃度と風味を得るために調整される。
関連製品
メイプルシュガー (maple sugar) :常温で固形化するまで濃縮されたもの。
メイプルバター (maple butter):メープルシロップを加熱濃縮した後、急冷しつつ撹拌してバター状にしたもの。
メイプルタフィー:熱いシロップを雪上に垂らして固めたお菓子。
メイプルシロップの種類(グレード):
等級は色、風味、糖含量で決定され、琥珀色が薄く風味が繊細なものほど高級となる。No. 1 等級は、糖分66 %以上に煮詰めたものを指し、混ぜ物はまったくなく色のみが異なる。No. 2 以下の等級は、一般に加工用や料理、焼き菓子の照り付けに使われることが多い。
- Canada No. 1 - エキストラ・ライト (Extra Light)
- Canada No. 1 - ライト (Light):薄い色合いで、穏やかで軽い風味が特徴があり、ワッフルやアイスクリームに適している。
- Canada No. 1 - ミディアム (Medium)
- Canada No. 2 - アンバー (Amber):中程度の色合いで、バランスのとれた風味を持つ。一般的に、料理やパンケーキなど様々な用途に使われる。アンバーは脂肪分はゼロで最もカロリーが少なく、ミネラルを豊富に含む上、独特の香りにはストレス解消効果もあるとされている
- Canada No. 3 - ダーク (Dark):より濃い色合いで、濃厚で深い風味がある。焦がしキャラメルのような味わいがあり、主に料理に使用される。
- ベリーダーク:最も濃い琥珀色をしたシロップ。一番香りが強く、コクがある。

メイプルシロップの栄養素
- メイプルシロップは天然の甘味料であり、主に糖分から成り立っている。
- 100グラムあたりの主な栄養成分
- エネルギー:約260-270キロカロリー
- 炭水化物:約67-68グラム
- 糖分:約66-67グラム(主にブドウ糖と果糖、1:1の比率)
- ミネラル:少量のカルシウム、鉄、マグネシウム、リン
- ビタミンやタンパク質、脂質はほとんど含まれておらず、炭水化物が主要な栄養素となっている。
- 主にカルシウム、鉄、マグネシウム、リンなどのミネラルが微量含まれている。ただし、これらのミネラルは摂取量が少なく、主な栄養源としては適していない。
- 栄養面では、メイプルシロップを摂取する際には主に糖分を考慮するべき。
- メイプルシロップの主な糖分はブドウ糖(グルコース)と果糖。これらは天然の単糖であり、メイプルシロップに甘みを与える主要な成分。ブドウ糖(グルコース)が約30-35%、果糖が約30-35%が果糖で構成されている。果糖もまたエネルギー源であり、他の砂糖や甘味料と同様に味覚に甘みをもたらす。
エネルギー | 257Kcal |
たんぱく質 | 0.1g |
脂質 | 0g |
炭水化物 | 66.3g |
食塩相当量 | 0g |
カリウム | 230mg |
カルシウム | 75mg |
マグネシウム | 18mg |
メイプルシロップのメリット
- メイプルシロップは天然の甘味料であり自然な甘みがある
- 少量ながら、カルシウム、鉄、マグネシウム、リンなどのミネラルが含まれている。
- 抗酸化物質も含まれており、これらは体内の酸化ストレスから身体を守る役割がある。詳細は下記。
抗酸化作用(研究)
1) Jean Legault, Karl Girard-Lalancette, Carole Grenon, Catherine Dussault, and André Pichette: Antioxidant activity, inhibition of nitric oxide overproduction, and in vitro antiproliferative effect of maple sap and syrup from Acer saccharum, Journal of Medical Food ,13 (2) , 1‒9, 2010
- この研究で、Jean Legault 氏らはカエデ (シュガーメイプル = Acer saccharum) の樹液とメープルシロップが、抗酸化作用、過剰な一酸化窒素の生成の抑制、および細胞増殖に対して、生理学的および医学的効果を持つかどうかを調査した。
- 研究の結果、強力な抗酸化活性を示し、一酸化窒素の過剰な生成を抑制、試験管内での細胞増殖抑制効果も確認された。
- 一酸化窒素は、炎症やストレス耐性に関与しているため、制御は健康に重要。
- 乳腺、結腸、脳、前立腺や肺のがん細胞の増殖を抑制する作用する可能性を示唆する。
- メープルの樹液とシロップが自然の抗酸化物質として機能し、炎症や異常な細胞増殖に対する有望な対策となり得るため、健康に対して潜在的な利益をもたらす可能性があることを強調している。
2) Liya Li, Navindra P. Seeram: Maple syrup phytochemicals include lignans, coumarins, a stilbene,and other previously unreported antioxidant phenolic compounds, Journal of Agricultural and Food Chemistry, 58(22) , 11673 -11679, 2010
- この研究で、Liya Li 氏とNavindra P. Seeram 氏 はメープルシロップに含まれる植物由来の化学物質を調査した。
- 彼らはメープルシロップ中のに、リグナン、クマリン、スチルベンなどの抗酸化物質を含む、従来報告されていなかった20種類以上のが含まれれていることを特定した。
- この研究結果により、メープルシロップが単なる甘味料以上の価値を持つ可能性があることを示唆している。

メイプルシロップのデメリット
- メイプルシロップは比較的高いカロリーを持っており、過剰な摂取は体重管理に影響を与える可能性がある。
- 血糖値の急激な上昇を引き起こす可能性があり、糖尿病などの健康上の問題を引き起こす可能性がある。
- 高糖分の摂取は歯の健康に悪影響を及ぼす可能性がある。