まとめ
- 塩分の摂りすぎと高血圧はあまり関係がない。
- 良い塩(ミネラル豊富な塩)は、適切なミネラルバランスを保つ点では有効だが、血圧が上がらないとの根拠は無い。
- 国の血圧の基準をもっと高くした方が良いかもしれない。
- 健康のためには塩分を多めに取る必要があるかもしれない。
今の定説
- 塩を取り過ぎると高血圧になり、高血圧を放置すると、動脈硬化、脳出血、脳梗塞、心筋梗塞、腎不全などの症状を引き起こす。
- 厚生労働省が2000年に開始した健康運動「健康日本21」でも、日本人は塩を取り過ぎているから、1日10グラム以下にするように指導している。
- 厚生労働省の血圧の基準は 84〜129 mmHg。
塩分が高血圧の原因説の根拠
(1) 1953年米国 高血圧学者メーネリーの実験
- 現在日本の減塩の根拠、第1位。
- マウスを使った実験。
- 6ヶ月毎日20-30gの食塩を与え、飲み水にも1%の食塩を加えて飲ませた結果、10匹中4匹が高血圧になった。
- わずか10匹のマウスの実験。
- 人間換算 200g / 日 × 40年。200g は人が到底摂取できる量ではない。
- 残り6匹の血圧は変化しなかった。
(2) 1960年高血圧学者ダールの研究
- 現在日本の減塩の根拠、第2位。
- 日本に高血圧症が多いことに注目。
- 東北と南日本を対象に食塩摂取量と高血圧の関係を調べた。
- 1日平均 27-28g 取っていた東北地方は、平均 14g 取っていた南日本より高血圧が多いと結論づけた。
- そもそも寒い地域は血圧が高い。
- 同じように塩を取っていても高血圧が多い地域と、少ない地域があることを見逃している。
- 当時は塩の摂取量を正確に測れなかった。
(3) ブラジルのヤノマモ族
- 減塩理論の根拠の1つとなっている民族。
- 血圧低く高血圧の人がいない。
- 最近まで塩を知らなかった。
- 無塩に適応している彼らは参考にならない。
本当に塩分が高血圧の原因?
(1) 青木久三 教授による高血圧の塩原因説の検証
●元•名古屋市立大学 青木久三 教授
※ 高血圧研究の世界的権威
※ 米国心臓学会からチバ賞(高血圧学会の最高賞)を受賞。
メーネリーの実験の追試験
【内容】
既に高血圧のマウスを4グループに分け、30週 血圧、体重、発育、体のむくみを観察。
① 低塩分食のグループ (飲み水 真水)
② 通常塩分色のグループ (飲み水 真水)
③ 10倍塩分食のグループ (飲み水 真水)
④ 10倍塩分食のグループ (飲み水 塩分食 1%)
【結果】
・①から③は変化なし
・④高血圧ではなく、食塩が排泄できなかったりため体液バランスを崩し死んだ。血圧が上昇が見られたが、高ナトリウム血症と、腎不全に起因するもの。この実験の塩分量は、人間の40年間分に相当する。
・遺伝性の高血圧のネズミには、食塩の摂取と血圧に相関性が無い。
・水を飲み、尿を排泄する能力があれば、かなりの高塩分量でも血圧は上昇しない。
(2) 1988年 「インターソルトスタディ」
- 食塩摂取量と血圧の関係を明らかにした国際調査。
- 32カ国52のセンター約10,000人対象。
- 48センターにおいて食塩の摂取量と高血圧症に直接的な相関は無かった。
- 4センターは未開社会 1日3g 少数民族
- 塩だけ減らしても殆どの人は血圧が下がらない
- 余分な塩は体内に止まることなく、汗や尿となって水とともに体外に排出される
(3) 1998年 食塩の摂取量と死亡の関係(ランセット)
- 「ランセット」イギリスで権威ある医学誌。
- 「国民栄養調査」を元に書かれた。1971-1975の期間、25-75歳まで。21万人を対象。米国。
- 塩分摂取量の少ない順に4つのグループに分け、死亡率を見た。
- 塩分摂取量が最も多いグループの死亡率が最も低く、塩分摂取量が最も少ないグループの死亡率が最も高かった。
- 塩分摂取量が最も多い日本が長寿大国であることが証明。
(4) 日本における減塩運動50年の結果
高血圧、動脈硬化、脳出血、心筋梗塞などの生活習慣病が減ると言われ、日本人はまじめに取り組んだが、高血圧患者は減っていない。3300万人の高血圧患者がいると言われる。成人の1/3。動脈硬化、心筋梗塞も減っていない。
(5) 日本人と欧米人の違い
- 平均塩分摂取量:日本人12-13g / 日、米国人 10g / 日 (5g / 日が望ましいとされている)。
- 日本は欧米と比較し、高温多湿。汗を多くかく。欧米は乾燥していて、皮膚から直接水分が蒸発するから塩分減らない。
- 欧米人は肉を多く食べる。肉にはナトリウムがかなり含まれている。(動物性食材はナトリウムが多く含まれている)
- 欧米はミネラルが多く含まれている硬水が多い。地域に毎に水に含まれているミネラルの量が違うためその点も加味する必要がある。
- 植物性食品の比率が高い日本人の食事はカリウム多い。カリウムはナトリウムを排出してしまう。
(6) 論理的に塩の不足があっても、過剰は起きにくい
- 人間には、体内環境を正常に保つ自動調節機能がある。(ホメオタシス=恒常性)
- 喉が渇けば水を飲み、水を飲めば尿意をもよおす。腎臓が正常であれば尿と共に、余剰な塩分も水分も排泄される。
塩の摂取をすすめる名医達
安保(あぼ) 徹 氏
※ 新潟大学教授(免疫学の権威)
「老けない人の免疫力」(青春出版社)
「若い人の元気がない、活力が感じられない、集中力不足の一因は塩分摂取不足によるものと考えて間違いない」
石原(ゆうみ) 結實 氏
※ 低体温化による、ガン、アレルギー、膠原病、高脂血症、糖尿病に、身体を温める作用のある塩は最高の治療薬になる可能性がある
「塩をしっかり摂れば、病気は治る」(経済界)
高田 明和 氏
※ 浜松医科大学 名誉教授
※「塩分を減らしても、それほど血圧は下がらない」「降圧薬、極端な塩分制限で血圧を下げると、ガンを誘発することが分かって来た」
「健康神話にだまされるな」(角川書店)
島田 彰夫 氏
※ 宮崎大学 名誉教授
※「世界のいろいろな地域での調査結果を総合すると、食塩摂取量が5グラムから25グラムの間では、食塩摂取量が多いほど脳卒中率が高くなるという相関関係は見出されません」「1日の食塩摂取量10g以下が望ましいとする根拠が明確ではない」
「伝統食の復権」(東洋経済新聞社)
石井 仁平 氏
※信濃町クリニック院長
※「救急臨床の現場でも、塩分不足による体調不良をら引き起こしている人が多い」
血圧が高くて良い理由
- 血液には、酸素、栄養、白血球や免疫を全身に行き渡らせ、老廃物を回収する役目がある。
- 日本人は塩分不足により血圧が低く、全身、末端への血流が不足している。それが、認知症、鬱病、骨粗鬆症、動脈硬化、脳梗塞などの原因になっている。
- 血圧の単位は mmHg (ミリメートル・エイチ・ジー)。Hgは水銀。血圧1mmHg は水銀を 1mm 押し上げる力。血液と水銀の重さの差は、1 : 12.95。170cmの高さまで血を押し上げるためには、最低 131 mmHg 必要 (1700 ÷ 12.95 = 131)
- 血管は曲折しており、末端の毛細血管もある。高齢者は血管が硬く、血圧が上がり易い。最低血圧は若者は140 mmHg 高齢者は 180mmHg の血圧が必要。
- 動脈硬化には3つの種類があるが、ほとんどの患者はアテローム(粥状じゅくじょう)硬化。これは大動脈など太い動脈の内膜にコレステロールなどの脂肪からなる粥状物質(アテローム:おかゆのようなどろどろとした物質)がたまって盛り上がった状態。アテロームを流すためには、高い血圧が必要。
良い塩は血圧が上がらない説は本当?
- ミネラル豊富な塩と血圧との相関を示す有効な記事も論文も存在しない。塩化ナトリウムには保水する働きがあり、カリウムには塩化ナトリウムを体外に排出する働きがある。
- 水分や塩化ナトリウムを排出するメカニズムは不明だが、塩化ナトリウムの排出とカリウムは関連があると思われるので、適切なミネラルバランスで、カリウムを体内に保持しておく必要がある。
- ミネラル豊富な塩は、適切なミネラルバランスを保つ点では、有効だが、血圧が上がらないとは言えない。